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日本帰省 〜米国人の夫と一緒に〜

9月後半に2週間ほど帰省した。いつもは自分一人で広島の実家に帰ってのんびりするだけなのだが、今回は夫と一緒なので帰省というよりは日本旅行に近かった。夫が日本を訪問するのはこれが5回目。東京・京都・広島の主な観光場所はもう行ったことがあるので、今回はホテル滞在や食事を楽しみ、トヨタ工場見学という趣向を盛り込んだ。

9月16日、日曜日、成田に到着し飛行機を降りて、接続通路に降りた瞬間、いきなりぼわっとした空気でその蒸し暑さに日本を感じた。夫と一緒に帰省のときはスーツケース運搬の都合上、いつもはホテル直行のリムジンバスに乗る。しかし、今回は初日だけホテルニューオータニ東京に予約していた。この日は3連休で、都内のホテルは週日より割高な料金設定になっていたが、ニューオータニはそれほどでもなかったし、一度泊まってみたいホテルだった。スーツケースを2泊目のホテルに成田から宅配便で出して、京成スカイライナーで、上野経由し地下鉄に乗り継いだ。

NYでお世話になっている日本人の美容師さんが夏に日本帰省し「日本の夏は暑くてたいへんだった。地下鉄の構内もショッピング・モールも節電で冷房がゆるくて汗だくになるよ。」と言っていたが、その通りだと思った。いつも米国の冷房がきつくてたまらないと言っている寒がりの私が、東京では暑くて汗をかいた。9月後半なのに30度Cもあるとは。

ホテルに夕方着いて、現地の夜の時間に合わせて寝ると時差ぼけを防ぎやすい。ホテルで早めの軽い夕食をと思って、ニューオータニ内の「麺処中川」というレストランに入った。別皿に立派な海老天2本付きの素うどんを二人とも注文した。2千円もしてうどんがこんなに高いなんてと思った。関東のうどんはしょうゆベースで汁が濃くて一般的においしくないが、しかしここのうどんは京風うどんで、薄口で素晴らしくおいしいかった。会計の時二人で4千円のはずなのに2千円しか取られず、「あれ?千円だったの?私の勘違いかぁ。」と思った。数日後にネットで調べたらやっぱり2千円が正しかったようで間違われて得をした。翌朝、ニューオータニの「レストランさつき」での和洋朝食ビュッフェは種類が多くどれもとてもおいしくて、その充実ぶりはさすがと思った。中でもシジミ味の味噌汁のおいしさには感心した。ご飯とみそ汁のおいしさは、そのレストランの品格を表すと思う。

東京滞在中、ちょうど大相撲秋場所を両国でやっていたので10日目を観戦。夫の相撲観戦は2回目。相撲がわからなくても、各対戦をどちらが勝つか賭けをしたらそれなりに楽しめるので、夫が初めての時そうしたら、夫はすっかり相撲が好きになったのだ。私はもともと大相撲ファンで、焼き鳥を食べて、生の相撲を満喫。この日の結びの一番で白鵬が負けて座布団が飛んで、夫は驚き「なんで?なんで座布団投げるの?こんなの初めて!面白いね。」と興奮していた。

トヨタ工場見学の前日はホテル日航豊橋に泊まった。日航ホテルの中ではビジネスホテル的と聞いていたが、予約していたデラックスタイプの部屋が満室ということで、なんとスイートルームにアップグレードとなり、超ラッキーだった。ベッドルームとリビングルームがあって、広くて清潔で快適。周りは工場地帯という感じでホテルの前にある焼肉屋で夕食。カルビもロースも焼肉の醤油たれもおいしくて、夫はすっかりごきげん。

翌朝、JRと私鉄を乗りついで三河豊田駅に着いて、そこからタクシー5分でトヨタ会館へ。そこで展示を見てから、他の外国人客20人程度と若い日本人女性のガイドさんと一緒にトヨタの工場見学用のバスに乗って高岡工場へ。英語のツアーを選んだので、ガイドさんはすべて英語で説明。バスの中で客の顔を見ない間もどんどん説明を続ける。何か見ながら話しているのかと思って手元を見たら何も持っていなくて、全部暗記しているようだった。あんな長い説明を丸暗記するなんて日本語でも大変なのによく覚えたなあ、仕事とはいえ大したものだと思った。

トヨタ工場見学の後、名古屋を経由して大阪へ向かった。今回の旅行のハイライト、リッツカールトンホテル大阪へ。入った瞬間空気が違う、豪華で格式の高さが際立っていた。丁度開業15周年のプロモーションをしていて割引価格だったので角部屋のデラックスルームをとった。家具もカーテンも高級でNYのプラザホテルの客室の内装と似ている。プールやフィットネスセンター利用券も付いていたので、サウナだけでもと思って行ってみた。

フィットネスセンターに行くと驚いたことにサウナの他に日本式の公衆浴場みたいなお風呂がついていた。「え?全裸で入る日本式のお風呂?」日本のあちこちにあるスポーツセンターには、会員が運動後に利用できる公衆浴場があるのは知っていたが、西洋的なリッツカールトンホテルのフィットネスセンターに、皆が全裸で入る日本式のお風呂があるとは意外だった。外国人が見たらびっくりするだろうなと思った。

翌朝の朝食ではこのホテルの格式の高さに不釣り合いなほど若い宿泊客が多くて驚いた。給仕係に尋ねるといつもこんなふうだと言う。やはり日本人は金持ちなのかなあと感じる。そういえば、夫が東京や大阪の街に買い物客が多いのを見て「こんなにたくさんの人が買い物している。日本は景気がいいじゃないか。」と言った。

大阪駅には参った。大阪駅が大幅に改装されて新しくなってから来たのは初めてで、特に大阪駅南側の地下街は迷路のよう。以前とはすっかり変わっていて迷う、迷う。「あれ?大阪には6年くらい住んでいたことがあるから慣れているはずなのに、なんでこんなに迷うのぉ?」ホテルに戻る道がわからなくなって地下街の店員さんに聞くと「大阪の人でも迷いますよ。」と言っていた。

大阪城を見学する前に大阪歴史博物館へ立ち寄った。東京の大江戸博物館と似た雰囲気で、昔の街並みのミニチュアや現物大の街が一角に作られていて視覚的にもおもしろい。夫は大阪城そのものよりこっちの方が興味深かったと言っていた。大阪城には修学旅行生の団体がたくさん来ていた。セーラー服の女子学生団体を見ると、夫は「なんで水兵のファッションを少女たちが着ているの?」と不思議がる。

今回の旅行では外国人が利用できるジャパン・レールパスを買っていて、JRが1週間乗り放題だったので、足を延ばして博多にも行った。直前に旅行ガイドブック「るるぶ福岡」を買って研究。福岡市役所前からオープントップの二階建ての観光バスが出ていて人気らしい。是非それに乗ろうと思ってさっそく行った。

ガイドさん付で1時間博多の街をまわってくれる。福岡ソフトバンクホークスの本拠地、ヤフードームのある湾岸を通るコースを選んだ。大きなカーブがある湾岸道路を車高の高いバスが通るときはコースターに乗っているみたいで強い風が心地よい。湾岸は新開発地域でオフィスビルや住宅建築物がそれぞれ個性的で街並みがとても美しい。

広島ではANAクラウンプラザホテルに泊まった。タクシーの運転手さんに「全日空ホテルお願いします。」と言ったら「全日空ホテルいうてもろうてうれしい。わしらはそのほうがピンとくるけぇ。クラウンプラザなんて言われてもピンとこんけぇのう。」と言われた。名称が変わったのは4年前くらい。長年、全日空ホテルという名称だったので地元民にとってはそのほうが自然なのだ。

広島では夫がお好み焼きを食べたいと言うので、今回は広島滞在中2回もお好み焼き屋に連れて行った。肉・玉子・そば入りを二人とも注文。大阪のお好み焼きと比べるとそば入りの広島のお好み焼きは大きいけれど、地元の人はお好み焼き一枚くらい子供でもペロッと食べるのが当たり前。夫は結構がっちりした体形だが少食派で米国男とは思えないほど日頃から食べる量が少ない。「とてもおいしいけど量が多くて」と言って4分の3しか食べられない。まあ、生ビールを飲むからそれでおなかが膨れているのだろうけれど。私は飲まないので彼の分まで1枚と4分の1をペロッとたいらげた。

夫が一足先にNYへ戻る前日は、広島エアポートホテルの敷地内にあるフォーレストヒルズ・ガーデンという所にあるコテージに泊まった。ベッドルームが二つあり真中に広いリビングルームがある。キッチン、冷蔵庫、食器、洗濯機など設備が整っていて、コテージ1棟借りて2人で泊まっても4人で泊まっても料金は同じなので、私の両親を呼んで4人で一泊した。ゴルフ場、テニスコート、プールがあって、テラスでバーベキューをするのもよさそうなところだ。今回はクラブハウスのイタリアンレストランで夕食を楽しんだが、家族や仲間と数日間ゆっくりするのによいところで、割安な料金体系だし、また行きたいと思った。

夫をNYへ送り出した後はようやく私は実家に戻ってやれやれ。夫と一緒だと航空券も二人分かかるしホテル代もかかるのでお金が飛んで大変なのだけれど、夫は「日本旅行を本当に楽しんだ。とってもよかった。ありがとう。」と私がNYの家に戻ってからも何度も何度も言うので、そんな風に言われたらまた連れて行かないわけにはいかない。毎回というわけにはいかないが、またそのうち夫連れで日本帰省をしたいと思う。