今月の執筆者

佐藤栄里子

 

同じ体験で共感できたら

 

 新しい朝が来た 希望の朝だ・・・と聴き、思い起こす夏の朝。この曲が流れれば、口ずさめる人も多いのではないでしょうか。ところが、この歌を「なぜみんなが知っているのか?」と不思議がる人がいました。その人は、耳が聞こえない人でした。

 考えてみれば、ラジオは音声のみの情報です。聞こえる人たちが毎日のように聴き、当たり前のように覚えられる歌を、聞こえなければ知ることはできません。ヒット曲や話題のCM、流行語なども同様でしょう。 「ラジオ体操の歌」の一件は、はっとさせられる出来事でした。

 私たちは「要約筆記グループ まるよ」というサークルで、要約筆記に関するボランティアを行っています。最近では、特に県のイベントなどで目にする機会も増えてきた要約筆記。聞こえない・聞こえにくい人々に対し、音声情報をその場で文字に置き換え、情報を保障するものです。以前はボランティアで担っていましたが、今では公的な福祉事業となっています。音声は書くのに比べ、ものすごい速さで流れ去ってしまいます。当初手書きのみだった要約筆記(今はパソコンも)では、そのスピードに追いつく工夫として、略語や略号が考えられました。サークル名の「まるよ」は、「要約筆記」を表す略号がで囲んだ「ヨ」であることから命名されたものです。近年のサークル活動では、人形劇や民話の語り等を、字幕付きで上演するイベントなどを行っています。

 ところで、筑波大学准教授の落合陽一氏と日本フィルによる「耳で聴かない音楽会」プロジェクトというものを、最近知りました。テクノロジーを活用した聴覚支援システムで、音の特徴を振動や光に変え、身体で音楽を楽しもうとするコンサートです。音楽から享受できるもの。それを聞こえに関わらず共有できるのだとしたら、と考えると嬉しくなります。

 私たちの活動はもちろん、このプロジェクトの比ではありません。が、聞こえの垣根を超えて、同じものを見て共感しあえたら、と考える点は共通すると思っています。そのためにできることは・・・?思いとは裏腹に、少ないメンバーそれぞれの事情もあり、活動を同じ「太さ」で継続することは難しいと感じます。これまで、立ち上げから会を維持されてきた方々の力に敬意を感じつつ、「できるだけ」を続けていこうとしているところです。そして毎月、リフレプラザでの例会へと、足を運びます。最近はもっぱら、12月に開催予定のイベントの準備中。今後案内を目にされた方はぜひ、会場を覗いてみて下さい。

 

要約筆記グループ まるよ